SENBOKUスマートシティコンソーシアム

Vol.37関西支部だより

公民連携まちづくり最前線

関西支部だより+ 37号(2023年5月版)
特集「都市経営とまちづくり」No.2

インタビュー記事

参加者
手取祐介氏:堺市 市長公室 政策企画部 先進事業担当 課長
石﨑典和氏:堺市 泉北ニューデザイン推進室 スマートシティ担当課長
中川健太氏:堺市 市長公室 政策企画部 先進事業担当 主幹
今中未余子氏:南海電気鉄道株式会社 まち共創本部 泉北事業部 課長
辻長知氏:大阪ガス株式会社 エナジーソリューション事業部 計画部 スマートエネルギー推進室 リーダー
伯耆千晴氏:西日本電信電話株式会社 ビジネス営業部 堺市ICT推進室 担当部長

日時:2023年2月21日
場所:南海電鉄本社
趣旨:今回の特集企画「公民連携まちづくり最前線」では、まちびらきから50年を経た泉北NT(ニュータウン)地域において新たに始まった、SENBOKU スマートシティコンソーシアムによる公民連携のまちづくりについて、お話をお伺いしました。

泉北スマートシティコンソーシアムの背景

手取氏(堺市):泉北スマートシティコンソーシアムが発足した背景は、泉北エリアを変えていくために10年以上前から行っていた取り組みにあります。そのひとつが、公的賃貸住宅の建て替えであり、大阪府、堺市、大阪府住宅供給公社、UR、南海電鉄で連携協議会を立ち上げて、活動してきました。しかし、千里ニュータウン等がある北摂エリアと比べて、泉北ではまちづくりの進捗が緩やかでした。その中で、今後10年間で20ヘクタールほどの余剰地が生まれるということや、近畿大学医学部が泉ヶ丘に開設されること等が契機となり、地域の課題をICTの力で解決することをめざして泉北スマートシティコンソーシアムが設立されました。
 スマートシティについては、「スマートシティというまちを作る」ということではなく、住民のニーズに即して、ヘルスケア、モビリティといった生活に密接にかかわる各分野をICTで繋ぐ概念だと捉えています。スマートシティはそのための手段であり、スマートシティという取り組みが進むことで、生活の利便性が高まったり、住みやすい、住みたいと感じていただく人が増えることをめざしています。またそのアウトカムとして、若い人が増えたり、働く場所ができたり、駅の乗降客数が増えてエリアが活性化するなどの効果が出てくることを期待しています。

イコールパートナーの公民連携

石﨑氏(堺市):泉北スマートシティコンソーシアムの特徴は、南海電鉄、大阪ガス、NTT西日本・堺市の4者が、コンソーシアムの目的をお互いに理解した上で、「イコールパートナー」として、取り組みを行っている点にあります。イコールパートナーという形態を取っている背景に、これまで行政主導で他のコンソーシアムを進めてきた中で見えてきた課題がありました。
 堺市では令和3年度に、泉北NT地域のこれからの取り組みの指針となる「SENBOKU New Design」を策定しました。住民が感じるエリアの課題に基づき、エリアの将来のイメージを住民と共有することで、泉北NT地域の価値を高め、次世代に引き継ぐことを掲げています。この「SENBOKU New Design」では、様々な取り組みの効果を高め、分野を横断するツールとしてICTの活用、スマートシティの推進を定めています。
 そして泉北NT地域の将来像を実現するため、4者(南海電鉄、大阪ガス、NTT西日本、堺市)が理念を共有して、お互いの目的を尊重しながらイコールパートナーとなるという関係を作りました。
 ですので、堺市の主導ではないですし、座長も置いていません。主に二週間に一回程度の頻度で運営委員会を行い、お互いに遠慮無く率直な意見を言える関係になっています。

住民主体のスマートシティ

手取氏(堺市): スマートシティのビジネスモデルとしては、例えば観光分野を中心に、ICTを活用して交通や宿泊、ショッピングなど来街者の利便性を高め、消費を喚起することで成り立つビジネスモデルがわかりやすいと思います。
 ですが、泉北NTはベッドタウンであり、商業機能が高くなく、来街者もあまり多くありません。泉北のスマートシティのビジネスモデルは、住民の普段の生活に密着した課題に寄り添い、地域住民の日々の生活利便性を高めていくことをめざし、地域にある様々なサービスを繋ぎ、毎日使って頂けるサービスを提供することにあります。 買い物や通院、趣味の活動など、日常生活に密着し、リピートして使っていただけるサービスを提供することが大切です。そして、様々なサービスが繋がり、地域の課題を解決していくことで、泉北独自のスマートシティができあがると考えています。

住民向けイベントの様子

委員会:泉北NTでのスマートシティのビジネスモデルは、どのように市内の他地域や他市に横展開していくことができるとお考えですか?

手取氏(堺市):それは非常に重要な点です。例えば、モビリティ分野については、人口減少により需要が減っていく中で、今後はオンデマンド交通の導入が注目されていきます。そこでは泉北NT地域で培った知見を、地域を越えて応用できると考えています。そこをめざして、市民一人一人に最適なサービスを提供する大阪広域データ連携基盤ORDENとの連携を検討しています。具体的には、大阪府の約880万人分のデータのうち、堺市の住民約82万人分のIDデータを用いて、堺市独自のスマートシティに活かしていきたいと考えています。
 スマートシティの実現に向けてデータ連携基盤の構築は重要ですが、本市ではデータ連携基盤として住民のIDをキーにして、健康や子育てといったサービスをつなぎ合わせ、ワンストップで提供することを考えています。
 このようなデータ連携の基盤ができると、将来的には他市でのスマートシティの推進にも活かせると思います。

委員会:住民IDをサービスに活用しようとすると、行政や民間の独力では難しく、泉北スマートシティコンソーシアムは理想的な場ですね。一方で、データ連携によるセキュリティや個人情報保護の問題は、どのように進めていますでしょうか?

手取氏(堺市):行政と民間企業が持つデータをお互いに全て共有するのではなく、まずはお互いの持っている個人データに紐付くIDのみを連携させることが、最初の段階だと思います。例えば、南海電鉄さんが提供する買い物アプリとか、他社のヘルスケアアプリなど、それぞれにログインしたりしなくても、行政のIDでスムーズに利用が開始できるといった形などを想定しています。

委員会:データを連携させたサービスは、どのスケールで最適化していこうと考えていますか?

手取氏(堺市):サービスによってスケールは変化すると思います。いずれは、大阪府というレベルから、堺市、泉北NT地域、各小学校区などまで、様々なスケールに対して地域に密着した情報の発信をめざしたいと考えています。グローバルプラットフォーマーが手がけるような「場所を問わない」サービスではなく、私たちは「場所を問う」サービスを作っていくことになると思います。

AIオンデマンドバスの実証事業の写真

各主体の想い

委員会:泉北スマートシティコンソーシアムが、イコールパートナーで官民連携を推進していることに感銘を受けました。イコールパートナーを維持できているコツはありますか?

辻氏(大阪ガス):低・脱炭素化や安心・安全なエネルギーの確立は、短期間での実現は難しいと考えています。取り組みの時間軸を、短期間・中期間・長期間に分け、運営委員会や会員との対話を通じて、まずは短期間での実証を検討しており、イコールパートナーとしての協力が必要と考えています。

伯耆氏(NTT西日本):我々が泉北スマートシティコンソーシアムでめざしていることは、自治体との連携や民間企業同士の連携のユースケースを増やしていくことです。そして、そのユースケースを、小さな離島から日本全体まで横展開することで、各地域が抱える課題を解決して、日本の景気回復に繋げていきたいと思っています。その手段として、スマートシティをどのように進めていけば良いのか、この泉北スマートシティコンソーシアムで知見を得たいと考えています。

今中氏(南海電鉄):我々も同様の想いです。今後、泉北ニュータウンで公的賃貸住宅の活用地が約10ヘクタール出てくる中で、しっかりと議論の場をつくって能動的にプロジェクトを動かしていく必要があると思っていました。ただ、最終的にこの泉北スマートシティコンソーシアムの発足を後押ししたのは、堺市やNTT西日本、大阪ガスのメンバーの方々が意気投合して、「やりましょう!やるべきです!」と言ってくださったことが大きいと感じています。

石﨑氏(堺市):イコールパートナーという関係性を可能にしているのは、各専門領域を持つメンバーが、堺市に遠慮すること無く自由に発言する場ができあがったことにあります。地域住民の幸福感、ウェルビーイングを高めるために、泉北スマートシティコンソーシアムを通して、実証事業や社会実装を行っていきたいという想いです。

委員会:泉北スマートシティコンソーシアムに参加しているパートナー企業との関係性は、いかがですか?

手取氏(堺市):ワーキンググループを作っています。例えば、エネルギー分野のワーキンググループでは大阪ガスさんがリーダーを務めて、パートナー企業の希望に応じて検討会を進めてくださっています。

今中氏(南海電鉄):パートナー企業には、泉北スマートシティコンソーシアムが持つアセットや人的資源を使ってもらいながら、能動的にアクションを起こして頂く環境を整えています。パートナー企業の中で、業界や業種がバッティングしている部分は、各ワーキングのリーダーが調整役を担っています。

住民参加

委員会:泉北のスマートシティの特徴は、「住民のためのスマートシティ」というお話がありましたが、「共創」や「リビングラボ」と言われるような住民参加については、どのようにお考えでしょうか?

中川氏(堺市):スマートシティの取り組みを進めるには地域で活動する団体との連携を深めていくことが重要だと感じています。泉北スマートシティコンソーシアムには、自治会も入ってくださっていて、会長と座談会等も行いながら進めています。また、若い方やテーマ型の活動をされている団体とも一緒に取り組みを広げていきたいと思っています。住民参加に関しては、泉北でのこれまでのエリアマネジメントの実績も活かしていきたいと思っています。

今中氏(南海電鉄):例えば、シニアの方々へのスマホ教室などを地域の大学生や高校生とともに定期的に行っていくというような形で、住民間の多世代交流とITリテラシー向上を図っています。

伯耆氏(NTT西日本):住民参加のためには、住民の方々に泉北スマートシティコンソーシアムの取り組みを知って頂き、応援したいと思って頂くことも大切だと考えています。

スマホ活用講座の写真

委員会:スマートシティの取り組みを住民に繋げる際に重要なポイントは何でしょうか?

中川氏(堺市):住民の方から地域の課題をヒアリングして、泉北スマートシティコンソーシアムを通じて企業と共に住民参加の形をつくり、ひとつひとつ皆さんの信頼を得ていくことが大切だと考えています。まずは成功事例を増やして、取り組みを広げていきたいと思っています。その際に、自治会であったり、NPO等の中間支援団体であったり、ケアマネージャーの方々であったり、企業と地域を繋ぐコミュニティの強さが成功のポイントだと思っています。地域と繋がって、市民の想いに寄り添いながら進めていきたいと思っています。

地元高校生の声を集めるイベント

目標設定

委員会:泉北スマートシティコンソーシアムで成果を出していくにあたり、目標とする時期やKPIは、どのように設定されていますか?

石﨑氏(堺市):一つの目標時期は、2025年だと考えています。大阪・関西万博がある年ですが、泉北に近畿大学医学部が開設する年でもあります。そのため、2025年までに、社会実装をめざしています。そして、公的賃貸住宅の活用地を用いた地域活性化の取り組みに繋げていきたいです。
 KPIは、参加するパートナー企業が、それぞれに設定していけるように考えています。堺市としては、39歳以下人口の推計値を1%上げるというのが目標であり、そのためのブランディングや住宅開発の呼び込み等を、KPIと考えています。

委員会:ヘルスケアの分野では、どのようなKPIを立てられていますか?

石﨑氏(堺市):ヘルスケアの関連に関して、堺市は、健康寿命の延伸を設定しています。しかし、注意するべき点は、泉北スマートシティコンソーシアム自体は市の政策を代替するものではないということです。
 市民に対する堺市の施策は行政としてしっかりやる。そのうえで、企業との連携でプラスαのサービスを提供していく、あるいは施策の効果を高めていくことが、泉北スマートシティコンソーシアムの位置付けです。

今後の課題

委員会:泉北スマートシティコンソーシアムの当面の課題は、何でしょうか?

石﨑氏(堺市):各プロジェクト繋ぐコアプロジェクトの組成と、データを活用したワーキング間の連携、ビジネスモデルの確立だと考えています。また、そこで大切なのが、泉北スマートシティコンソーシアムの取り組みへの住民参加です。住民参加に関しては、まず泉北スマートシティコンソーシアムを知ってもらうことが必要です。広報誌やアプリを通じた周知だけではなく、住民の方と接する場を継続して作っていきたいと思っています。

委員会:本日は貴重なお話をありがとうございました。

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