みんなでつくるさんわのとしょかん~さんとしょ~

Vol.37関西支部だより

関西支部だより+ 37号(2024年3月版)   
特集「都市経営とまちづくり」No.10

インタビュー記事柏木洸一さん(尼崎市都市整備局・(一社)オリコム代表理事)、杉原竜太さん(尼崎市総合政策局・(一社)オリコム理事)、白崎友朗さん(尼崎市都市整備局・(一社)オリコム理事)

日時:2023年12月21日 場所:さんとしょ~さんわにあるみんなのとしょかん~
主催:都市計画学会関西支部編集広報委員会
趣旨:尼崎市職員でありながら地域活性化のために活動されているオリコムの方々に「さんとしょ」の誕生秘話についてお話を伺いました。

さんとしょの開設のきっかけ

編委:ここ三和本通商店街にあるさんとしょについて、開設のきっかけをおしえていただけますか。

白崎氏:さんとしょを開設するまえから私たちで三和本通商店街で様々な活動をしていたという経緯があります。例えば自転車のマナー啓発の活動などを5~6年続けていました。当時、地域活動の拠点が欲しかったこともありましたし、商店街組合事務所の移転が決まったのですが1階部分をもっと魅力的に使えたらいいなと思っていました。そのような中、柏木さんが「本棚オーナー制度」が静岡県焼津市で始まったというネット記事を見て、視察に行って感銘を受けたことがさんとしょ開設のきっかけです。焼津市の「本棚オーナー制度」の店舗もここと同じように商店街の中にありました。焼津市でできるのであれば、人口規模の大きい尼崎市でも成功するのではないかと思い取り組みました。

さんとしょの本棚。区画ごとにオーナーが異なる。

柏木氏もともと、商店街には本屋があったのですが閉店してしまいました。本に触れ合うスペースは欲しかったものの、本屋だけでは地域のためにはならないだろうというのが私たちの考えでした。商店街からすると、本を売らない図書館事業をするなんてなかなか理解ができなかったようで、そんな仕組みで人から料金を取るのか、というようなことは言われました。

杉原氏:なので、商店街側にきちんとプレゼンをしました。これまでの地域での活動の積み重ねもあったので、ではやってみてと言ってもらえました。

上階は商店街振興組合の事務所として使われている。

柏木氏尼崎で本のニーズがどれだけあるのかというのは、若干心配ではありました。クラウドファンディングする際に、約30人の本棚オーナーが集まると物件の家賃を支払えるということで、先行で30人集めることにしました。その前にまず10人集めてみたら、2・3日で枠が埋まりました。20・30人で募集をかけてもすぐに枠が埋まったので、これは大丈夫だというのがそこでわかりました。結局オープン時で58人集まりました。クラウドファンディングが終わった後も問い合わせをいただいたり、本棚オーナーをやりたい人っているのだと思いましたね。

さんとしょのオーナー制度の仕組み

さんとしょの空間的特徴と効果

柏木氏さんとしょの特徴はフリースペースが広いところです。他の本棚オーナー制度の施設は本棚が全面にあって、椅子・テーブルがある程度でスペースが無いことが多いです。私たちはフリースペースを使いたい人は結構多いのではないかと思っていました。この辺りで公民館は少なく、あっても少し離れていて使いにくい位置にあるので。ですので、なるべく広く可動式にするとか、テーブルも壁に寄せるなどこだわっています。そのかいあってイベントはかなり頻繁にされますね。

フリースペースは小さな子どもが遊べるほどの広さ。

柏木氏子どもが勉強しに来ることもあります。夏休みのことですが、お弁当を持ってほぼ毎日来る子もいました。お母さんは働いていると言っていました。お母さんが最終日にお仕事を休まれてうちに来られて「ありがとうございます。いつも鍵っ子で去年まで家に居たんです。」とおっしゃられていました。ここの空間をみて、お母さんは「さんとしょであれば出かけてもいいよ」言えたそうです。要は見守り役の大人がいながらも自由に過ごせる場所が近隣にないのです。あってもお金を支払わないといけないとか。さんとしょは心理的安全性の高い場所だったらしいです。毎日ここを使うお子さんが数人いらっしゃって、子どもの見守りニーズもあるというのは、結構驚きでしたし、フリースペースを広くして良かったと思いました。

取材の日も子どもたちがさんとしょを訪れた。
本棚オーナーが図書係となって店番を行う。

編委:このような居心地のよい空間だからこそ人がたくさん訪れるんでしょうね。

柏木氏そうですね。靴を脱いで上がる設えにしたのですが、子どもが居やすくなったと思うので、それは良かったと思います。コミュニティスペース的な使い方をしてほしいのですが、コミュニティスペースと名乗ると、少し意識の高い人やコミュニティスペースで何かしたい人が来るので、ハードルをあえて下げるということにこだわりました。

場所のオーナーシップを育む仕掛け

編委:フリースペースは本棚オーナー以外の人は使えないですよね。

柏木氏そうです。そこはミソで、自由に利用等はしてくださっていいのですが、フリースペースを使ったイベントはオーナーしかできないようにしています。本棚オーナーの中には専業主婦の方もいらっしゃいます。オーナー料金は月2,000円という価格設定にしていて、働いていない方でも負担は少なく済みます。ショップスペースとして物も売って良いので、何か作っている方で売る場所がなかったけれど、商品は余っているので、オーナーになって図書係りをしながら販売されているという場合もあります。まだできて1年ですがステップアップしていっている感覚はすごくあります。 月2,000円のハードルは絶妙なところで、気軽にチャレンジできる金額だったのかなと思いました。3万円の店を借りるのは難しいですが、月2,000円であれば商売してみようという人が現れたのは良かったですね。

編委2号店・3号店を出そうという話にはなっていないのですか。

柏木氏おそらく運営が絶妙に難しいと思っています。私達がオーナーさんに強く言っていたのは、私達はイベントをしませんということと、何かしてほしいということにも答えませんということです。ただ「何かしたいです」と言われれば相談に乗ります。さんとしょの椅子は、実はオーナーさんと一緒に作ったものです。椅子が欲しいと言ってくれたので、「わかりました、椅子の材料は買います。」と答えました。そして「DIYをする日も決めるので来てください。」と言って皆で机をつくりました。そこは非常にこだわっていて、皆さんオーナーシップを持ってこの場を運営してくださっています。その運営に神経も労力も使うので、2・3店舗運営するのはあまり良くない気がしています。強烈なリーダーシップのコミュニティは作れるのですが、そうするとオーナーさんがチャレンジしなくなるので、やはり自分のまちだとか自分の場所だと思っていただかないといけないと思います。商店街でお店を出店してほしいというのが最終的な目標なので、リーダーシップを持っていたら、あなたが店をすれば良いということになってしまいます。そうではなく、あなたたちが主役で、あなたたちにまちに出てほしいというのがここのミソですね。

約60の本棚オーナーの区画がある。

パラレルキャリアを活かした地域活動

編委:公務員であるみなさんが、オリコムとしてさんとしょの運営や地域活動に取り組むといったマインドに変わったきっかけはありますか。

柏木氏都市計画プロフェッショナルスクールには行っています。勉強しないといけないと思いまして。でもその前から、副業は始めているのですが、私と杉原の二名が商店街に関わってもうそろそろ8年、9年と長いのですが、趣味の延長の感覚です。 ワークライフバランスという概念は無くて、全てがライフの中にはまっているという感覚が染み込んでいます。尼崎市にはパラレルキャリア応援制度という者があり公務員の一部の副業を認めているのですが、私たちもその制度のもと活動しています。

杉原氏:公務員は組織と肩書きで仕事に取り組みますが、副業であるオリコムとして商店街で活動している際は「顔」で仕事をしないといけない。その感覚が長年の地域活動で身に付いていたことがさんとしょの成功の要因の一つかもしれません。

編委:日頃の地域活動で養われた行動力・実行力がさんとしょにも活きているんですね。ありがとうございました。

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