民間発意、公民連携の公共空間整備・運営(神戸市東遊園地)

Vol.37関西支部だより
関西支部だより+ 37号(2024年3月版)   
特集「都市経営とまちづくり」No.11

インタビュー記事村上豪英さん/株式会社村上工務店代表取締役・有限会社リバーワークス代表取締役、広脇淳さん/神戸市北区役所山田出張所所長(元神戸市建設局公園担当局長)

日時:2024年1月16日 場所:東遊園地WEEKEND
主催:都市計画学会関西支部編集広報委員会
趣旨:神戸市東遊園地を対象に、民間発意の公民連携による公園整備・運営の取り組み内容や効果についてお聞きしました。

左:村上氏 中:広脇氏

村上氏の参画の経緯

村上氏:私が東遊園地に関わったきっかけは、2014年に神戸市役所の企画調整局を中心とする方々からのヒアリングを受けたことがきっかけです。そこで、都心の活性化にとって良いことは何か探して欲しいと言われました。私は東遊園地の近くに住んでいて、東遊園地が神戸ルミナリエや神戸まつりではすごく賑わっているけど、普段はびっくりするぐらい人がいないことを知っていたので、東遊園地が良くなることでまちがよくなると思い、提案したことが私にとっての始まりです。そして、神戸市役所がデザイン都市推進会議という有識者会議を設置していたのですが、その会議の主要な議題として東遊園地の再整備を取り入れていただきました。有識者の方から「ぜひ東遊園地をよくしましょう」という言葉を聞き出せたことがすごく大きかったです。その会議で提言されたことを1つの追い風にして、その後の検討を、企画調整局と行いました。本格化するために市と面談し、翌年2015年5月に2週間の社会実験につながります。当初は提案する立場で誰かがやるものだと思っていましたが、だんだん自分たちで汗をかいて関わる必要があると思うようになりました。第1回目の社会実験の時には、自分たちが主体になっていました。

広脇氏:2014年当時、公園部計画課長をしていました。都心三宮の再整備は市長の公約でもあり、公園部としては都心にある公園をリノベーションしていくことが大きな検討課題でした。その時にちょうど、デザイン都市推進会議で東遊園地が大事だと言っていただいたことで、私たちの取り組みと結びつきました。

社会実験の開始

村上氏:初めての2015年の社会実験では、予算措置が伴わなかったこともあり、早く実現できました。一部市の負担をいただきましたが、自分たちで費用を負担し、6月と11月の2回実施しました。これにより、市役所もこの場所の価値を再認識しました。2016年からは、市が予算をつけて、舗装された土のグランドに天然芝を敷き社会実験を行いました。東遊園地は、神戸ルミナリエなど大きいイベントの実施との調整が避けては通れないので、イベントのために一時的に芝生が消失したとしても、翌年に再生できるのかなどといった検証がなされました。私たちは、2015年の社会実験で役割は終わりだと思っていましたが、2016年から公園部が公園全体の全面的なリニューアルを意図していることがわかってきたので、長期に社会実験に参画することでそれに役立てるのではと考えるようになりました。2016年から一般社団法人化し、毎年6月から11月の頭(ルミナリエの準備が始まるまで)ぐらいまで、社会実験をしながら、公園に毎日行ってどういう変化が起こるのか、何を仕掛けたらどういう人が来るのか、何をしたらクレームが来るのかということなどを調べました。

広脇氏:デザイン都市推進会議の提言の時から、芝生がいいよねという話はありましたが、芝生はすぐ剥げて使えなくなる可能性も高いので、土壌改良、保護材、芝生の種類など、実際試してみてどうすれば維持できるかを検証しないと本格リニューアルはできないと考えていました。2014年の段階で、都心再生のため都心の三公園である、東遊園地、みなとの森公園、小野浜公園をリニューアルする必要があるとは考えてはいましたが、東遊園地を大きくリニューアルすることは難しく、芝生化は無理ではないかとその段階では思っていました。2015年から社会実験がスタートし、2016年から、芝生化の社会実験の成果もあり本格リニューアルに舵をきることになります。市では社会実験と並行して、大阪市立大学(当時)の嘉名先生に委員長になっていただき、公園の再整備の検討委員会を立ち上げました。検討委員会は、アドバザリーボードに引き継がれ有識者のみなさんからは、貴重なアドバイスを多くいただきました。それが、東遊園地の基本構想と基本計画に繋がっています。基本構想については、ゾーニングを決め、これからどのような公園にしていきたいかを明確に示すために議論をしました。賑わいが少ないことが大きな課題なので、色々な人に使ってもらえる公園にしたいという思いがありました。基本構想では3つの方針を取りまとめました。1つ目の方針が利用されることを重視した「人が主役の公園」。2つ目の方針は、この場所が神戸発祥の地であることなど「神戸らしさがひかる公園」。3つ目の方針は、「しなやかな器となる公園」です。近年では公園の使い方が変化し、パークマネジメントが注目されている中で、これからは様々な要素を公園が受け入れることでまちに貢献していくことができるのではないかと検討会で議論されたことに基づきます。基本計画では具体的なプロセスを示し、アンケートなども実施し、2018年6月に取りまとめられました。

村上氏:その間も社会実験を続けていました。また、再整備検討委員会にはオブザーバーとして、毎回呼んでいただいて、社会実験の報告もしていました。なので、行政の皆さん、委員会、私たちの間で見ている未来がそうほとんど変わらないというのは実感していました。

編委:社会実験をするにあたって、村上さんを中心とする提案を採用するという整理はどのようにされたのですか。

広脇氏:1年目の社会実験は、有識者会議での提言内容を実施する実行委員会に行為許可するという割とシンプルな方法で実施されました。内容については企画調整部署が実行委員会の窓口を担当し、公園部としては社会実験の成果をまとめフィードバックしてもらうことを委託しました。2年目は、再整備の検討を進めるための社会実験という位置づけから公園部で予算300万円を確保し仕様書を作って、社会実験の事業者を公募しました。結果、2社の中から村上さんらが選ばれました。3年目以降の社会実験は成果を積み上げるため村上さんらに引き続きお願いしました。他の事業者から東遊園地で何か関わりたいという話はありましたが、社会実験そのものに協力するというところは多くなかったです。私自身は、計画課長以降も公園担当局長で退職するまで公園部で事業に関り続けることになります。社会実験を続けているさなか、2018年に都市公園法改正があってPark-PFIの制度ができました。その前には新たな時代の都市マネジメントに対応した都市公園等のあり方検討会を国交省が開催しており、神戸市としても民間事業者とどのように連携するかは、非常に大きなテーマとなっていました。しかし、単に民間事業者を参画させればいいわけでもなく、村上さんとやってきた社会実験の成果を活かすことが重要で、東遊園地にふさわしい公民連携を目指してきました。公園部局では昔から公民連携を進めていて、布引ハーブ園ロープウェイ、ノエビアスタジアムなどに取組んでいました。これらの取組と今回の東遊園地の再整備事業が大きく違うのは「公園をよくすれば街がよくなる」ということを民間の村上さんから言ってもらい、官民で共有できたことだと思います。

村上氏:社会実験はリニューアルの計画に役に立てると思って関わっていたし、その後に関わる予定ではなく、カッコいいカフェが入り運営するのでは漠然と思っていました。公園部から事業スキームのヒアリングを受けた時には、建物が与条件として与えられる指定管理ではなく民間が提案できるスキームが良いと答えていました。社会実験しているタイミングで、東遊園地らしい良さを発揮し続けていくためには、 カフェなどの飲食事業者は必要ですが、そこに全部お任せするとなかなか公園そのものを良くしようという発想は生まれないなということを考えていました。もともと一般社団法人リバブルシティイニシアティブとして関わっていましたが、建物を建てて持ち続ける事業主体として、村上工務店も参画することになりました。2019年になってからです。

神戸ルミナリエの準備が進められている風景

Park-PFIの導入

広脇氏:東遊園地の再整備事業については、全てを民活で整備・運営することは難しいと思っていました。その中で、公共事業としてどこまで責任を持ち、どこまで民間のノウハウと資金を入れてもらうのかについての検討が一番時間がかかりました。結果として、社会実験の成果を取り入れた活用スペースは北側の1.9haの敷地だけにとどめて、全てをお任せするのではなく、コアとなる1,000㎡程度の広場と300㎡の建物、これらをセットで民間整備・運営していただこうと考えました。そうすることで、日常的な賑わいを創出できるのではないかと。そして、それ以外の北側園地ではソフト事業の提案をしてもらうことにしました。東遊園地は、神戸の顔である公園であり、登録文化財の指定も受けているため、神戸市として守るべきものは守るというスタンスが必要で、すべてを民間に委ねることはしませんでした。Park-PFIの制度における説明をすると、公募対象施設というのがカフェが入った建物です。特定公園施設というのが、向かいの小さい広場です。それ以外は、園地として行政が再整備します。この三段階の区分でpark-PFIの公募設置等指針を提示しました。2019年8月から公募し、審査会での審査を経て11月に事業者として村上工務店グループを選定しました。

村上氏:応募する側の立場としては、仕様書となるべき基本設計が固まっていない状態でPark-PFIの公募になったため、基本計画を頼りに応募し、選定後に提案も受け入れていただくことによって基本設計に反映させていくことになりました。基本計画は基本設計に比べて精度は落ちるものの、選定された後に基本設計が進められたので、基本設計プロセスにも運営事業者の立場で関わることができて、社会実験の成果が活かされる設計内容となりました。

村上氏:整備主体は村上工務店です。Park-PFIに手を挙げたのは、一般社団法人リバブルシティイニシアティブと村上工務店(代表企業)、ティーハウス建築設計事務所が連携した合計3社のJVです。現在は、この建物施設については村上工務店が保有しており、施設は、丸々、一般社団法人リバブルシティイニシアティブに村上工務店が貸しています。カフェ部分は飲食事業者に転貸しています。一般社団法人リバブルシティイニシアティブが直接運営しているのは、南側とテラス、北側のラウンジであり、貸しスペースとして収益源にしています。村上工務店から見ると、神戸市に支払う公園使用料は一般社団法人リバブルシティイニシアティブからの賃料収入を充当しています。

公園の再整備にむけたプロセスの共有

広脇氏:公園に求められている機能は少しずつ変化していると考えています。良好な景観と、自然な空間があることが基本としながら、最近では雨水浸透などグリーンインフラの機能が大切など、多様な機能をしなやかに使いこなしていくことが求められています。広場の芝生化は公園の様々な機能を高める可能性がある一方、維持管理には、リスクが伴う施設です。行政は一般的にリスクを避けたいと思いがちですが、行政も一定のリスクを持たないと事業が進まないと思うようになりました。今回のP-PFIでは大きな芝生広場の管理については、芝生化の社会実験で一定の知見は得られていましたが、利用と管理のバランスのとり方までは確立しておらず、行政がリスクを担うことで、民間の挑戦を促すことができると考えました。

村上氏:芝生を民間だけの判断に任せたら、ルミナリエはやめよう、ルミナリエの実行委員会に補償を求めないととなりかねない。この場所で何が大切か、官民のリスク分担の考え方が大切です。この公園の幸せなところは、隣に市役所があることです。何か実験してうまくいくときも全然うまくいかないときもあります。その時、市役所の公園部の方が見ていて、今回「よかった」、「悪かった」を言ってくれます。「こういう風景がこれからもあってほしいね」とか、「こういうイベントはまちの真ん中だから避けられないが注意しないといけないね」、あるいはもっと極端に、「こういうことは二度としないほうが良いね」など風景の方針をずっと一緒に考えることができます。そういうプロセスの中では、一世を風靡した他の公園の改修事例を、神戸市と村上工務店がお互いの立場で視察してきて、あれどうだったとか、どう思いますかなど話すこともありました。その中で、別の公園を否定することはしないが、東遊園地としてめざしたい方針というものは一致していることが確認できていました。

広脇氏:プロセスが共有できたのが大きいです。社会実験を継続してもらえたのが一番のポイントではないでしょうか。民間でこのような見識がある事業者がいるというのは神戸市にとって幸せなことです。

編委:社会実験の次のフェーズはどのような財源で取り組まれたのですか。

村上氏:2016年~2018年までは毎年300万円位の予算をいただき、毎年500万円ほどカフェで収益を上げ、200万円程度を協賛で集め、一般社団法人リバブルシティイニシアティブとしては年間予算1000万円ほどで運営してきました。公金をいただいている部分と自分たちで稼いだ分の両方が財源となっています。

村上氏:店舗については、カフェにしたかったというよりは、一番自然に公園に常駐して、コミュニケーションの中心になる方法が、コーヒーを提供することかなと思い、取り組んでいました。

行政の役割、民間の役割

編委:公募の指針を作る際にどのような点を意識しましたか。

広脇氏::事業が成立することが重要なポイントとなります。そのため社会実験をやられてきたリバブルシティイニシアティブには意見を提供してもらうだけでなく、社会実験の成果を報告いただきました。Park-PFIでは設置許可使用料を民間で競争し、高いところを選定することが定石です。しかし、民間の投資が公園に入り、公園が良くなるかがより重要です。そのため、民間で一定収益をあげていただき、活動が公園の利用者を呼びこみ、より多くの人に公園の良さを提供することにつながるかの視点で、公募等指針を作成しました。そのためには、民間事業者におんぶにだっこではなく、また行政が1から10まで面倒を見るのではないところを目指す必要がありました。そのためのさじ加減が社会実験から得られた成果だと思います。

村上氏:東遊園地全てが民間に委ねられている場合を考えると、民間事業者としてはコストを抑制し収益性を高めることを考えないといけません。事業収支はやはり最後までわかりませんでした。出店先を決める時にシンクタンクの売り上げ予測を参考に算定することがありますが、この場所では全然あわない。公園全体がよくなれば売り上げは伸びるという感覚はありますが、規模は社会実験時とは異なるので最後まで確信がなかったというのが正直なところです。

編委:リニューアルするにあたって、地域の方から反対の声はありませんでしたか。

広脇氏:地域の代表の方には検討委員会に入っていただいており、再整備のプロセスを共有できていたと考えています。かなり大きく手を入れたので、やはり緑が減ったよねという意見は若干ありましたが、開放的になって良かったという声が圧倒的に多いと思います。

村上氏:以前の東遊園地は、散策によるみどりの鑑賞やイベントとしての使用などをねらって設計されていたと感じていました。しかし、今では特に明確に使いたいという意図がない利用者が、ただ心地よく過ごすことということが、公園に求められているという変化があるように感じています。

広脇氏:以前の公園は旧居留地側からみて入りにくいし見通しが効かず、日常は散策しながら鑑賞するような公園でした。イベントに利用される土のグラウンドは、30年くらい前は、会社員がキャッチボールをしたりするような使い方が多かったですが、近年ではそういう使い方もほとんどなくなっていました。芝生化により家族がレジャーシートを広げてお弁当食べるような風景が生まれたのは画期的です。維持することも含めて大変だと思いますが、芝生の力を強く感じます。スポーツなど競技のための芝生もあるし見るための芝生もありますが、ここでは使える芝生を目指しています。

村上氏:社会実験を通じて、考えてできることは全部やってきたつもりです。毎年秋に撤収して、翌年自分たちが行うかどうか決まっていない状況で、ファンがついてきてくれたのに何もなくなってから始めるのが大変でした。社会実験時の方が常設完成後よりよかったこととしては、公園がよくなることでまちが良くなることを信じていて、頼まなくても日々の運営からイベントまで助けてくれる人がいたこと。以前は良いことを言っている助けてあげたくなる人たちと思われていたが、建物が建ち立派に見えるようになると関わり代が感じられにくなっているかもしれない。どのように関わっていただけるか考えているところです。

村上氏:やはりまちの価値は究極的には不動産価値だと思います。元々、地域の不動産価値を上げたいというのをすごく考えていて、それについては一定できているのだろうなと思います。すごく驚いたのが、4月にここがリニューアルオープンしてから、非常に多くの人が来たのですね。今までもこの公園には、近くに寄った人が、東遊園地にも行ってみようという風に足を向けてくれる方いたと思うのですが、今では家を出る時からこの公園めがけてきてくれています。それはすごく驚きました。当然その方々はここだけではなくて色々な所に足を向けますので、やはり居留地の中の人の流れなど変わったなという風に思います。その先のチャレンジとして、旧居留地の大丸と一緒になり全体の回遊性の向上などを考えているところです。

広脇氏:駅とウォーターフロントの間で東遊園地が回遊性を高める役割を果たし、新たな賑わいを創出するいい仕組みができたと感じています。今回の再整備では、基本構想から設計に携わったコンサルタントにも、P-PFI事業との調整に積極的に参画してもらい、公園全体のランドスケープと民間事業の調和に対応してもらいました。また、工事をする造園業者にも、芝生化の社会実験から参画してもらうと共に、管理やメンテナンスに意欲が継続できるよう、冬に枯れても楽しめる自然な植栽を主体的に実現してもらいました。東遊園地で実現したランドスケープがリビングネイチャー神戸の取組としてまち全体に広がっていくことを期待しています。

村上氏:公園が今まで以上に人気が出ていて、使いたいイベンターがたくさん出てきています。公園管理者が市役所なのですが公園の人気度合いが大きく変わったために判断が難しくなり、常駐している私たちの感覚とすりあわせる必要を感じたこともありました。建物中で静かなイベントをしたい、外での大きな音のイベントをしたい、は両立しない。一定のイベントがいいかどうかの判断、季節のよい週末は毎週イベントをしていた方がいいのか、などは今後の課題です。以前は使い方がふさわしくないと思ったらすぐに利用者に話にいったが、今は話を聞いてくれずに自らの意見を主張する人が出てくる、人気があるというのはそういう難しさと直面することでもあります。

広脇氏:公園は、自由な利用が原則ですが、使い方にはいろいろな意見があります。行政として一定のルールは決める必要性がありますが、規制看板だらけにはしたくありません。土のグランドの一般的な公園でも言えることですが、使う人たちがルールを決めるのが大切です。特に東遊園地は公民連携で管理運営していくことを目指しているので、条例に書いているわけではありませんが、東遊園地のローカルルールを共有していくことが大切だと思います。

村上氏:民間の施設としては貸しスペースがあるのが特徴で、自主的なプログラムで講演に使ったり別の使い方でも使ってもらったりしています。貸しスペースの利用は開業から徐々に増えているがもう少し増えてほしい。公園がよくなることと民間の収支がマッチするのは貸しスペース。カフェは売り上げ歩合でいただいています。使ってもらうことが事業者としての安定につながるように、同じ方向を向きたいという思いからそうしている、経営者としては不安なところですが。

編委:公園運営に取り組まれる中、感じる課題はありますか?

村上氏:市民や利用者の関わりしろを多く作る必要性を感じています。公園整備前はたくさんの方がボランティア的に関わってくれていたのですが、公募を経て正式に運営事業者として選定されたこともあり、関わりしろがないように感じてしまう側面もあるようです。

編委:公募の時に公園部分が他社より使いやすいなどのお墨付きはあるのでしょうか?

村上氏:公募の時にはじめから公園全体の活性化が求められており、小さい方の芝生の使い方にはしっかり相談して考えていただいています。

広脇氏:P-PFI事業では20年間の基本協定の中で一定の使い方を決めています。小さな芝生の行為許可は村上さんらの使い方に委ね、料金設定もできるようにしています。大きい広場をイベント等で利用する場合は公園部その都度許可しており、申請を出してもらえれば、お互いの信頼関係の中で許可を出します。市主体の行事を優先するなど優先順位は協定である程度決まっていますが、週何回使うというようなことが決まっているわけではありません。

編委:社会実験の時から什器のデザイン性が高いと思うのですが、配慮されていることはありますか?

村上氏:色々な方に助けてもらっているだけです。写真の撮影とその質にはこだわっています。毎年次の年がどうなるかわからない状況だったので、ゴミにならずに再利用できるように建築の場材を使うなどデザインコードは決まっていきました。

公園の評価

編委:社会実験の時もしくはオープンしてから、公園評価の項目で定められているものはありますか。

広脇氏:それはないですね。あった方が良いですね。

広脇氏:公園の利用者利用実態調査的なものは、あまりないのです。最近ではビッグデータが色々な場面で活用されているので活用できないかと検討した経緯はあります。しかしそれをもってPark-PFIの評価にどのように使うかというのはまた違う話かなと思います。単純にイベント数での評価などはありますが、 それが公園のバリューになっているのかを見極めていかないといけないと思います。

村上氏: 例えば5月や10月の昼間の気持ち良い時にどれだけ公園に人がいるのかという点で見れば、もうこれ以上来なくて良いというほど人が来ていると思います。しかし、朝早い時間や夕方以降の遅い時間など、もっと使える時間帯があると思うので、使うきっかけをお伝えし、情報を提供することで使ってもらいたいなとは思っています。実は去年に5回ほどナイトピクニックという名前でイベントを開催したところ、想定以上にお客さんが来ました。今年はイベントが無くても、夜の公園が気持ち良いとわかってもらえる仕掛けをしたいと思っています。社会実験を始めた時には芝生がきれいなだけでは不十分で、行って何をしていいかわからないと考えている方が多かったように思います。しかし今は時間の過ごし方を考えて来てくれるようになっています。

村上氏: 基盤としての公園の未来を考えるための座組としては、地域のまちづくり協議会や学識者と考えるのがいいのではと思います。

編委:公園が良くなるとまちが良くなるというのは、どのようなところで感じられていますか?

村上氏: 測り方は不動産価値になるが他の要素が多すぎてそれだけでは測りにくい。周辺の事業者と一緒に回遊性で評価しようと試みています。以前は震災の記憶が紐づくことで中心性が高まっており、その割には何もない時には来ていないのがギャップでしたが、今はこのような風景があったら気持ちいいという潜在的な認識ができてきました。公園への愛着をリピートや滞在時間で測ってみたいと考えています。

広脇氏:歴史がある公園ですし、変わったとしても変えていないものもあります。指標として何を取るべきか、息が長い話なので改修したから急に集客できたということでなく、続いていくことが大切です。

公共空間からまちは変わるか

編委:最後になりますが、公共空間からまちは変わるでしょうか。

広脇氏:変わると信じています。公園には可能性もあるし、今実際見ていると変わりつつあるなと感じています。人が主役の公園を目指すとしており、今回の事業に参画していただいた方々が主役であることはもとより、利用者など色々な人たちにも公園を愛していただくことが大事だと思います。

村上氏:大きなディベロッパーでもなければ行政でもない一般の人がまちを変えるのには、公園しかないなという風に思っています。まちを育てるつもりでやっていると話していたのですが、アルバイトのスタッフが本当に公園が変わるとまちは変わるのですね、と言ってくれたのは印象的でした。他はやはりハードルが高すぎるし、公園だと色々な方が関わる余地がつくりやすいなという気はしています。

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