道路空間の将来形検証とスマート化に向けた社会実験「御堂筋チャレンジ2021」

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株式会社地域計画建築研究所 絹原一寛

大阪のメインストリート、御堂筋。現在、道路空間再編事業が南から順次進められています。近年の自動車交通量の減少と歩行者の増加に対応して、車道である側道2車線を歩道化、歩行空間を拡張しつつ自転車通行空間を確保し歩車の分離を図るもので、先行して2016年に千日前通~難波駅前区間の東側(約200m)がモデル区間としてオープン。2021年1月現在、モデル区間の北側、道頓堀川~千日前通の両側側道(2期整備区間)で工事が進められています。

加えて、御堂筋は2021年2月、神戸、姫路とともに全国初の「歩行者利便増進道路(通称ほこみち)」に指定、同年7月にはモデル区間の一部エリアが特例区域にも指定され、民間の創意工夫による積極的な利活用が望まれている状況です。

このハード整備やほこみち指定と歩調を合わせた社会実験「御堂筋チャレンジ2021」が実施されました。社会実験はこれで3度目となり、モデル整備と御堂筋完成80周年とタイミングをあわせた2017年、そして2020年と実施されてきましたが、特に前回はコロナ禍の影響が大きかったこともあり、なんば駅前広場の歩行者空間化の社会実験ともタイミングをあわせて、再チャレンジとなりました。

今回の狙いとして、歩車分離と滞在、さらには自転車対策を両立させるベンチやファニチャーのあり方について、官民の役割分担とともに検証し、地域のメンバーとも議論を重ね、実際の将来形やさらなる延伸区間へと反映させる試みを実施しました。

沿道テナントによるオープンカフェ

加えて、道路空間の利活用を道路協力団体にも指定されたエリアマネジメント団体、一般社団法人ミナミ御堂筋の会が主体で実施。来るべき大阪・関西万博をにらんで、NPO法人Homedoorとコラボしたシェアサイクルと、大日本印刷株式会社らによるデジタルサイネージを搭載した、ベンチ一体型のモビリティハブを設置しました。加えて、御堂筋に接続する東西の石畳の似合うカフェストリート、御堂筋西側のビルオーナー・沿道テナントとも一緒に、道路空間でのオープンカフェを展開しました。継続した事業展開に向けて、関係者とさらにバージョンアップが図られる予定です。

シェアサイクルを設置したモビリティハブ

さらに、ウォーカブルなミナミエリアに向けた議論のベースとなる、大阪市・大学研究室やデータ会社による広域の人流データ取得や滞留調査を実施しました。このデータを活用しながら、御堂筋や周辺商店街も含め、コロナ禍であってもいかに歩いて楽しいミナミを創っていくのか、を地域の商店街の関係者らと実証・トライアルを重ねていくこととしています。

沿道関係者による現地検証の様子

道路空間活用の社会実験は各地で実施されていますが、こと御堂筋においては下記の点が特徴的だと思います。

①道路の将来形を社会実験で検証し、地域との議論を経て整備に反映する

社会実験はあくまでも手段で、そこで得られた知見やデータを地域の関係者と共有、議論を重ねて整備に落とし込むプロセスを御堂筋では徹底しています。このように「検証しながら整備していく」スタイルは、タクティカル・アーバニズムとも通じると考えています。

②周辺との連携、面での波及を意識して取り組む

御堂筋は東西の通りや周辺の商店街と一体となって、歩いて楽しいエリアを創出するウォーカブルミナミの背骨の役割を果たすことが望まれ、社会実験でも隣接商店街とのコラボを行う、あるいはエリア全体の回遊に向けたベースとなるデータを取得するなど、周辺との連携が意識されてきました。

目下の課題は、事業継続に向けた財源の確保です。引き続き、エリアマネジメント団体が官民連携のもとで試行錯誤していくこととなりますが、このプロセスもまた、恒常的な事業を生み出すための「社会実験」と言えるかもしれません。

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