プロジェクト・トーキング05_駅前が担うべきエリアの魅力(天王寺駅エリア)

vol.39関西支部だより
関西支部だより+ 39号(2026年3月版)  
テーマ:駅前が担うべきエリアの魅力(天王寺駅エリア)
石原凌河さん(龍谷大学)
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登根哲生さん(株式会社アール・アイ・エー)
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永田賢司さん(阪急電鉄,都市活力研究所)

■企画趣旨の説明(編集広報委員会より)

日時:2025年11月26日 場所:㈱地域計画建築研究所大阪事務所
主催:都市計画学会関西支部編集広報委員会

まちづくりプロジェクトの批評の場をつくる
関西のまちづくりのプロジェクト・事例を回ごとにひとつ取り上げ、そのすぐれた点や興味深い事象を「独自」の切り口で評するレビュー・トークセッション

編委この「プロジェクト・トーキング」は、関西のまちづくりプロジェクトの批評の場を設けたいという思いで立ち上がった企画ですが、まちづくりプロジェクトそのものへの評価や批判といった「プロジェクトの良し悪し」ではなく、まちづくりプロジェクトを介した批評者同士の「トーク」を主要な目的としています。

 ここでは「批評者」は「話者」と呼ばれます。話者は、テーマとして設定されたまちづくりプロジェクトに対する着眼や解釈を他の話者に話題提供し、それを起点に話者間で掘り下げを行っていただくことで、当該まちづくりプロジェクトの新たな価値が浮かび上がります。さらには、話者の内なる見識や哲学が表に出て交わりあうことによって、(記録の読者も含めて)互いに学びを高めあい、新たな理念や仮説が立ち上がることも合わせて期待されます。

 第5回となる今回は、「天王寺駅エリア」をケーススタディとし、「駅前が担うべきエリアの魅力」をテーマとし、石原凌河さん、登根哲生さん、永田賢司さんにお集まりいただきました。では、よろしくお願いします。

1.話題提供

話題提供の様子

話題提供:登根哲生さん

学部・大学院では大阪市立大学の都市計画研究室に在籍していました。2008年にRIAに入社して、金沢では、容積率600%あった高度利用地区を約300%で計画して「市街地整備2.0」として取り上げられた市街地再開発事業に取り組みました。他には、暗渠化していた惣構の堀を用水路として復元する再開発も担当しました。大阪に戻ってきてからは、「ステーションヒル枚方」のプロジェクトマネジメントの立場で関係者調整や事業スキームの組み立てをしています。直近では加古川の非住宅型の駅前再整備もやっていて、駅と川とまちをつなぐウォーカブル空間をつくる計画を進めています。

では本題です。3つの切り口でお話しします。1つ目は、エリアの魅力が「密度と多様性」によるものではないか、という切り口です。昭和17年の大阪市の航空写真を見ると、この辺りは寺町をはじめ天王寺公園も含めて、かなり大きなエリアが順番に開発されてきたと言えます。都市基盤整備、不燃化、都市化への対策、高度利用と、一通り必要な整備を時代の変遷の中で、その都度着手されています。密度と多様性を安全性、刺激、自由の3軸で捉えてみたいと思います。昔の天王寺公園前の青空カラオケや将棋は、世の中的には安全ではないかもしれないですが、自由さがあって独特の雰囲気がありました。大型開発が進むと、ハルカスやてんしばのように安全性は高まり、刺激も薄れ「日常の延長」になっていく。ハルカス、美術館、展望台は非日常の体験ができる刺激はあるのですが、用意されたメニューで楽しむ、という形で、自由ではない。阿倍野の再開発のように、道路や公園は整備されているけれど、自由度も刺激も薄い、と感じる部分もある。寺町周辺は、目的性は限定的ながら界隈性があって、ホテル街とセットで見ると、安全かどうかの幅がある、と見ることができます。北側の天王寺駅前商店街〜阪和商店街は雑多さを残しつつ、いくつかまとまった界隈性があり、これらそれぞれの面開発が時系列的に積み重なってできているのが天王寺なのかな、と整理しました。

登根さん 発表スライド

2つ目は「界隈のつながり」です。まち全体がつながっているとまでは言えない。南北の幹線道路と東西のJR西の線路がまちを4つに分断していて、それぞれが特色のあるエリアになっている、というのがこのまちの特徴だと思いました。天王寺は大規模ターミナルでありながら主要な駅同士の改札間の距離が近く、まちとしてコンパクトな印象です。駅を降りてから4つのエリアへのアクセスのしやすさがあるのも強みです。一方で、これらのエリア間が「無計画に繋がっている」感もあります。エリアごとに駅とつながる計画にはなっているのですが、どうしても駅の位置や高低差が決まっているので、つなげにいくことの強引さが表れる。それはネガティブなものではなく、強さとして捉えています。駅の改札を降りたら百貨店を通って主動線があり、近鉄百貨店を抜けてHOOPへ真っすぐ通す、とわかりやすく表現できます。橋や地下街の接続も立体的でよく考えられています。その時どきの開発の中で、駅とつなぐことを技術的に苦労して成立させていることには頭が下がる思いです。

3つ目は「新陳代謝」です。表が裏になったり、余白が変化の機会になったり、そういうものが混ざり合う短期的な空間が常にできているのがポイントだと思いました。天王寺公園の玄関口は、青空将棋やカラオケのある雑多で裏的な雰囲気でしたが、子どもが走り回るきれいなてんしばになった。ルシアスやアポロビルは、できた当初はショッピングセンターとしての地位があったはずですが、近鉄百貨店やHOOPに若い人の足が向くと、賃料が下がって面白い店が出てきて「お父さんたちの駅前ビル感」を醸し出してくる。チェーン店のようなきらびやかさはないが、相対的に賃料が下がるため他の人の出店チャンスにつながり新しい業態が登場する、というのが面白いと思いました。飛田側につながる昔からの道の商店街は賃料が安く、広場も途中にあり既にウォーカブル空間でもある。見方次第で可能性があります。適度な密度の都市で、居住人口も抱え、商売ができそうな環境もまだある。町が新陳代謝していると感じました。駅前商店街も、建物上部がつながっていて敷地内通路のような形になっている場所があり、新しい店が生まれてくる余地があります。今の時代に合ったサービスを入れれば、大規模面開発をしなくても新しい都市機能を入れやすい場所がある、という意味でも新陳代謝が起こり続けていると思いました。


話題提供:石原凌河さん

防災や災害復興の研究をしていますが、最近では交通政策にも関心を持っています。特に鉄道駅のマネジメントや駅まちづくりに関心を持って研究を進めています。

まず「天王寺」エリアと言いながら「あべの(阿倍野・阿部野)」エリアが食い込んでいる点が特徴的です。天王寺・阿倍野・阿部野・あべのと呼び方が分かれているのが面白いと思いました。近鉄電車はJR天王寺駅の近くにターミナルがありながらも、「大阪阿部野橋駅」と名乗っているので、エリアとしてあえて一体にならない意思を見せています。キタは私鉄駅が「大阪梅田駅」に改称されてしまったので、別々の名前を維持しているのはここぐらいではないかと思いました。近鉄南大阪線の前身である大阪鉄道は「大阪天王寺駅」として開業したのに、翌年には差別化のため「大阪阿部野橋駅」に改称されました。このように近鉄は一貫して「天王寺」と言わず、「あべの(阿倍野・阿部野)」で統一しています。近鉄前交差点南東側は「近鉄村」と称されるような近鉄が開発した商業ビルが立地し、近鉄のブランディングが浸透したエリアが形成されています。そもそも橋の名前が駅に使われていますが、「阿倍野橋」は天王寺区と阿倍野区をつなぐ橋であり、川ではなくJRの堀割の路線をまたぐ橋のことです。「阿倍野橋」という名前を入れているのは、天王寺と競合しつつも、阿倍野と天王寺をつなぐ意味合いで名付けているのではないかとも思いますし、その橋が一体感を支えているとも思っています。

次に「区界横断型」エリアになっている点も面白いです。天王寺区・阿倍野区・西成区に横断するかたちでエリアが形成されています。市町村界を跨いで町が形成されている例はニュータウンなどで見られますが、ここは区界に跨っているのに一つのエリアとして認識されている点が面白いと思っています。さらに、JR天王寺駅の阪和線ホームと近鉄大阪阿部野橋駅がともに行き止まりホームで迫力があることも特徴的です。行き止まりだから乗り換えが必要となり、その結果、賑わいが生じます。行き止まりホームとしては、近鉄阿部野橋駅は1位の阪急梅田駅、2位の南海難波駅についで6面5線で全国3位ですが、天王寺エリアは近鉄に加えてJR天王寺駅の阪和線ホームも行き止まりとなっているため、両駅ともに駅としての風格を出しやすく、賑わいにも繋がりやすいと思います。

JR天王寺駅は民間事業者の阪和電気鉄道がつくったという私鉄として敷設された経緯があり、さらに駅舎整備のために民間資本で整備して商業利用する位置付けになる「民衆駅」として天王寺駅ビルをつくったときには近鉄も出資しています。JRと近鉄はライバルというよりも協力関係にあるところも面白いです。
ゾーニングとしては、近鉄前交差点の南東が近鉄村エリア、南西は市街地再開発事業・土地区画整理事業区域から遊郭につながるエリア、北西は阿倍野橋を渡って天王寺公園、北東は「ウラ天王寺」と呼ばれるガチャガチャした感と寺町、というかなり個性的な区分けができる一方で、それが一体的に多様なエリアとして形成されています。

石原さん 発表スライド

話題提供:永田賢司さん

兵庫県で生まれて大学入学を機に神戸に出てきて、今は結婚して枚方に住んでいます。阪急洛西口駅の高架下まちづくりプロジェクト「TauT(トート)」は2015年の構想段階から8年間担当し、そこから町と関わり始め、今10年くらい地域活性化や地域連携をしていて、行政の方や地域のプレイヤーの方と繋がる機会が多い会社員です。

天王寺エリアは通天閣も徒歩圏で、スパワールドやジャンジャン横丁、美術館、動物園、てんしばもある。駅前の商店街が道路沿いにあり、高密な裏天王寺と言われるところもある。ハルカスがあり、HOOPもある。エリアのイメージとしてはハルカスとキューズモールが強く、路面電車が特徴的な風景だと思います。話に上がっていますが、駅から東西南北の4象限でエリアが大きく分けられている印象です。北東が古い路面の商店街、北西が美術館・動物園・新世界。南東はハルカスがあり、その先に住宅街と学校ゾーンで、学生が平日昼間歩いている。南西はキューズモールと、路面電車が通る町。

用事があるのかないのか本当にいろんな人が街を歩いていて、選択肢の幅が広いんだと思います。一気に整備されすぎると失われるものが多いので、様々に幅を持たせながら、少しずつ変わることで魅力が維持されているのかな、という気がします。

永田賢司さん(写真左)

2.トーク

登根:エリア全体としては多様性があって分断されているという特性を強く感じます。

石原:分かれていながら多様性として捉えられるのが面白いです。

登根:特に東西南北の4象限的にまとまりをもって説明できるのが特徴ですね。

石原:4象限を生んでいる縦軸(谷町筋〜阿倍野筋)と横軸(国道43号線・大阪環状線)の存在感が強いです。

登根:まず中心の天王寺駅に集まって、そこからどこかに向かう、という人のうごきがあります。

永田:向かうエリアで雰囲気が変わるので、人のタイプも変わりますよね。

石原:てんしばに行く人は、おしゃれな富裕層が多いですかね。酔っ払いは近づかない、という印象もあります。

永田:青空将棋があったんですね。知らなかったです。

登根:青空将棋などは都市問題的な要素だったかもしれませんが、そこで飲んでいたような人が飲みに行くところも近くにあるから、てんしばに変わっても天王寺そのものから離れなくてもよい。

石原:「天王寺」と「阿部野橋」。ターミナルで名前が違うのは、ここぐらいではないでしょうか。福岡にある西日本鉄道も「西鉄福岡(天神)駅」に改称されたので、結局駅名が一緒になりましたよね。

お互いの話題提供を聞きながら書き留めたメモ(※)を振り返りながら ※カード・ダイアローグを活用

永田:梅田もインバウンドにとって大阪駅と梅田駅が同じエリアだと示すため大阪梅田になりましたが、ここはそういう配慮が不要なエリア。人によって天王寺でもいいし阿倍野でもいい、という感じがあります。

石原:近鉄は天王寺と頑なに言わないのがすごいですね。あべのブランドで押し通しています。

永田:阿部野橋駅が頭端式で終点なのは特徴ですね。

登根:住民層もさまざまです。駅前の新しい住宅は比較的高いです。天王寺の唯一性や、南の方の人が出てくる上でのターミナルとしての希少性はあるので、お金を払える人は出せるエリアだと思います。
再開発エリアにはマンションがある。外国人も住んでいる。働いている人もいる。飛田側まで行くと家賃も下がる。雑多さと合わさって住む層も変わっていく。4象限の中で、住んでいる人の層も違うのではないかと思います。

石原:天王寺高校の辺りや寺町の方も、また違う感じがありますよね。

永田:ターミナル駅エリアにいろんな人が住めるのはいいですよね。

登根:ただ、駅前だけどパブリックスペースがないですよね。巨大な十字路が、もはやパブリックスペースとして機能していて、敢えて作る必要性がなかったのかもしれない。

永田:十字路に分断されていたから、パブリックスペースという緩衝空間がなくともいろんなエリアができて、エリア間の差異自体がパブリックスペースに求められる機能の代わりになっていたということもありそうですね。

登根:平面的には明確に分断されていることに加えて、地下の構造は複雑という特徴は珍しいのでは。

石原:地下がまちの界隈性を担保しているのかもしれません。

永田:界隈性、つまり変化が感じられる、ということですね。

登根:高校生が集まるフードコートと、おじさんが安い生ビールを飲むルシアス下があり、寝そべりとチラシ配布と売春の客引きをいっしょくたに禁止する掲示が貼られている。この面白さは、ハルカスのような新しい超高層ビルが並ぶようなまちづくりだけだと見えてこないのかもしれません。

石原:古いビルも市街地再開発事業で再整備されたビルも超高層ビルも混在していて、古いビルが高校生やおっちゃんを吸収している。ビルにさまざまな時代性があり、それぞれに合ったテナントが入り、来街者のニーズに応えているのは面白いと思います。

登根:天王寺の東西南北の4象限を200m足らずで行き来できるのは他にない面白さだと思います。歩きながら徐々に変わるのではなく、地下街や街路の横断で急に場面転換するので、エリアの変化を認知しやすいのかもしれません。

石原:例えば、飛田と土地区画整理事業区域の境目で、雰囲気がバーンと変わるんですよね。

登根:全体として統率が取れている訳ではないのに、エリアごとに個別に秩序が形成された上でうまく繋がって全体が成立している。個々が頑張って自分のエリアを良くしようとしている結果が現れている。結果として、まちとしての特定の拠点性が感じられない。

石原:天王寺というまちとしての明確な意思を誰も背負わないかたちでまちづくりが進んでいるということをすごく感じました。「あべのハルカス」があれだけ大きいスケールで頑張っているのに、拠点になりきれていないところもあります。

登根:「ウォーカブルな街」の概念として、15 minutes neighborhoods というものがあります。これは、自分が街に来て、目的の場所やお気に入りに行きやすくて、その間の街も楽しい、というもので、押し付けられるものではない。パブリックスペースやコモンスペースがなくとも、施設や店舗がという民地がメインの街でもそれぞれ思い思いに過ごせるというのは、理想とするウォーカブルのあり方のひとつと言っていい。都市の多様性が担保され、新陳代謝が起きるには、ある程度の密度が必要だと考えています。ここでいう密度は「ひとの往来の密度」です。人が集まってもずっと留まると水のように淀む。人が集まって少し撹拌的に回ると、水が綺麗になるように、住みやすくなる。天王寺エリアには、そういった「密度」の動きがあるんじゃないでしょうか。

トークの様子

登根:おもしろい密度が生まれるには計画上で「解ききらない」ことを大切にしています。「大きな広場を作ったら賑わう」という解決策を提示するのではなく、小さくいろんな接点を作っていく。接点がたくさんあると、居心地の良さの感じ方に多様性が現れる。安全であってもわかりやすいきらびやかなものだけを作ることがプランニングではない、と思ってます。

石原:阿倍野の再開発は長年事業が進みませんでしたが、どう評価できるのでしょうか。時代的に、バブルがはじけて「失敗だ」という世間的な認識がある一方で、私自身はよくやりきったと評価しています。

登根:市街地再開発事業の単体としては経済的に損失があるかもしれません。一方で、出来上がってしばらく経った現在では、公園や道路などのまちとして必要な余白ができてきている気はします。今後そういった余白が面白く使えると、「自由」につながります。鉄道会社的には市街地整備はどう見ていますか?

永田:乗降客をはじめエリアに来街者のボリュームが一定あれば、開発は進みます。時代ごとにできるかたちは違いますが、その都度判断して実現可能な開発に取り組んできたんだと思います。全てを一気に変えたら一気に陳腐化する、というリスクもありますが、少しずつ街の変化が動いていった。時代が変われば関わる人も変わるので違うものができていった、と整理しています。

石原:駅直上に巨大商業とホテル、オフィスからなる「あべのハルカス」ができた中で、「Hoop」と「あべのand」が取り残されなかったことは、エリアデベロッパーとして商業のポテンシャルを評価し回遊性を担保しようという意識が表れていると感じます。

トークの様子

登根:鉄道会社が、エリアリノベーションに取り組む余地はあるんでしょうか?沿線開発として鉄道用地や自社の未利用地だけでなく新たに土地を仕入れることはありますか?

永田:あまり事例は見ませんが、経済合理性として新しく建てていくこと自体がそろばんが合わない。となると、「じゃあエリアの価値を高める手法として何をやろうか」という話の流れでエリアリノベーションが射程になることはあり得ます。となった時に、そういうことはやることになっていくかもしれないですけど。その場合も、少しずつ手を加えていくんだと思います。そうすることで多様性が残っていきます。

登根:会社で先週トークイベントを企画したんですけど、寝屋川市と小牧市で、駅前の商業施設の大きな空き区画に、市の行政サービス(図書館とか子育て支援)を入れて、結果、今の市民ニーズが多様化する中で、迅速に対応したまちづくりができる。大きい開発でやると10年、20年かかってしまう中で、その間に社会環境が変わって作れない、という話もある中で、安く早く良いサービスを提供する時に、行政として計画の位置づけの中で、まちづくりとして駅前拠点でリノベをやっている、という話をいろいろやっていたんです。そういうのって、行政だけでなく沿線とかインフラ系の社会基盤を持っている民間企業でもあり得るのかな、と。最近そんな話をしていたので、今日の話にかこつけて「どうですか」と聞ってみただけなんですけど笑。

石原:開発を1つずつ進めていく中で失敗もある。でもエリアとしてはその失敗が結果的にいろんな人を受け入れることにつながります。

登根:住宅開発の面でも、地域にいろんな人が実際に住むことそのものが、密度につながっていますよね。

石原:天王寺エリアは繁華街然となりきれないところがある。生活空間としての基盤が残っているのが魅力的です。

石原:近鉄は自社用地を開発していますが、天王寺・阿倍野エリア全体をマネジメントしようとまでの動きは感じられません。結果として、天王寺・阿倍野エリアの多様性に寄与していると思いますが、なぜなんでしょうか。

登根:不動産価値向上に寄与するか、企業のブランディングにつながるかが企業型のエリマネの判断基準になります。

石原:エリアマネジメントの活動の一つに交通マネジメントがありますが、天王寺エリアはコンパクトに繋がっていてアクセス性が高いので、その必要性が薄いと感じています。

登根:エリマネをやらずとも、それぞれが自分たちの持ち場をきちんと盛り上げればそれが結果としてエリアの価値を高めている、ということですかね。

永田:エリアマネジメントをやるには、合意形成の上でみんなでやらないといけないから、エリアの将来像を同じにするひとが一定いないとできない。このエリアでは、そういうまとめ方ができないのかもしれないですね。多様性の話が出ましたけど、それぞれが交わる必要はない、というのもありますよね。いろんな人が存在するだけでいい。

トークの様子

登根:交わらなくても誰も困っていない。選択肢の幅が感じられるということが街の豊かさなんだと思います。それぞれがスムーズに繋がってないのも効いてますよね。分断されているから個性が残っていて、それでいて繋がろうとしている。

永田:多様性の中に、進学校と言われる天王寺高校などが含まれているのもこのエリアならではの特徴だと思います。

登根:梅田は、駅同士がコンパクトにつながっている、というより、各駅を最寄りとする開発があって、それらを人が行き来するイメージがない。グランフロント大阪に行くひと、阪急方面に行くひと、阪神方面に行くひと、といったように、目的地と駅がセット。天王寺は必然的に、どの鉄道に乗ってきてもみんながエリアの中心で降ろされて地上に出される。そこから各方面のどこへ行こう、となる。ある意味わかりやすい、ユニバーサルな都市構造ですよね。

石原:駅直結のタワーマンションがなく、駅から離れているというのも特徴です。

登根:歩道橋も面白いです。歩道橋の上で路上ライブしてる人がいて、すごく洗練されていました。同じ青空で歌うのでも、かつてのカラオケとこんなにも風景が変わるのか、と思いました。これは、歩道橋も、単なる往来じゃなくてなんとか溜まりを作ろうとしている感が感じられました。新耐震基準に対応済みで法的には使い続けられるビルがストックとしてたくさんある。老朽化しても壊して新たなビルを作る需要がなければ賃料を下げてストックとして使っていくことが必然化されはじめている。人がまずエリアの中心に集まって、その周りのアクセスしやすい場所に様相の異なる地区がコンパクトに集結している。都市の構造が天然のコンパクトシティになっているという立地的優位性は揺るがないでしょう。

永田:強靭性のあるまちは強すぎない。いきなり悪くならない。一気に良くなっていないから一気に落ち込むことがない。どん底にはならないんだと思います。

トークを終えて記念撮影(左から登根哲生さん、永田賢司さん、石原凌河さん)

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