関西支部長 川田 均
(南海電気鉄道(株)執行役員)
世界中がコロナ禍に見舞われて1年余。効率性・利便性を追求するあまり時間に追われて人は知らず知らず豊かな生活スタイルとは何かを忘れかけてきた。大都市への過度な機能集中、他律的な生活行動様式、グローバル化による価値観の収縮、環境・生態系への影響、地方の疲弊などを顧みて、都市と地方のあり方を再考する良い機会と思う。
ネット環境が社会に定着してもツールの役割でしかなく、都市は如何に人をストレスある空間・時間から解き放ち、人がリアルに集まり知を交し創造性を育むという都市本来の力を再考すべき時である。地方は単に都市からの移転・移住としての受け皿に留まらず、自然、歴史・文化、産業など固有の付加価値をいかに新しい生活様式に組み込み、魅力づくりに繋げられるかその真価が問われる。
効率性のために1か所に集まって働くという近代以降の社会様式や派生需要としての無用な移動は見直され、移動の先にはリアルでなければ得られない人との交流、学び楽しむ体験の場がより価値を持つことになろう。従来のオフィス・住宅・店舗が融合するような新しい空間も求められ、人が生活様式を自己決定できる多彩な選択肢が持てる都市に昇華させる計画制度・・・・時間、空間、機能などに少しあそびを持たせた「余白のある都市計画」が求められるのではないか。
まとまりある生活圏、人間性を回復するグリーンインフラ、公民空間の融合・再編によるウォーカブルな空間、知と感性が交わり創造性を生むワークプレイス、地産地消による地域循環型経済システムなど、近年進められてきた都市計画の方向性はコロナを契機により一層重要性が増し、都市と地方が協調してサステナブルな関西都市圏が再構築できるよう多様な議論が交わされることを願っている。
最後に関西支部は今年創立30周年を迎え、秋には本テーマの議論も含め30周年記念行事を企画しており多数の会員皆様の参加を期待する次第である。