高麗橋ストリートパーク2021 ~シェアドスペース社会実験~

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船場倶楽部 三好正人(大阪ガス株式会社)/総合調査設計株式会社 清水勝民

1.社会実験実施の背景

大阪都心部に位置する船場地区は、その大半が都市再生緊急整備地域に指定されるなど、より一層強力な国際競争力を有する地域として大阪の成長を牽引していくことが求められる地区である。戦後には、中心業務地区として発展する一方で、人口・産業の空洞化が進行し地区活力の衰退が見られたが、近年では都心回帰の動きが見られ、職住遊が複合する”都心船場”を形成している。

こうした地区の状況やSDGs~持続可能なまちづくりの推進、新技術の進展といった社会背景をふまえ、新たな時代に即した地区の形成をめざし、令和3年度から国土交通省のまちづくり活動を支援する制度である官民連携まちなか再生推進事業を活用し、官民で組織した「船場まちづくり検討会(以下「検討会」)」において地区のあるべき将来像を示す、未来ビジョンの検討を行っている。

2.社会実験の概要

社会実験は、未来ビジョンで示すべき将来イメージ、公共空間のシェア・利活用による歩きやすく・歩いて楽しいまちの可視化(円滑な合意形成に向けた沿道、地域との公共空間の利活用イメージの共有)、歩車分離しないシェアドスペースの実現により、生活道路におけるパブリック空間をウォーカブルな人中心の空間へ転換し、あわせて地元地域主体による道路空間の利活用の実現をめざし実施している。

(表1)社会実験の概要

名 称高麗橋ストリートパーク2021 ~シェアドスペース社会実験~
実施体制実施主体:船場博覧会実行委員会、船場倶楽部(占用主体:大阪市中央区役所)
実施場所大阪市中央区高麗橋2丁目・3丁目地先高麗橋2丁目道路(高麗橋通)2街区と公開空地
実施期間2021年11月18日(木)、19日(金)、20日(土) 3日間〔イベント実施時間〕
平日11:00~20:00/休日10:00~20:00

具体的には、①道路空間と②民地(公開空地)を占用し、それぞれの空間において地区内のオフィスワーカーや住民、そして来訪者が憩い、交流のできる空間の創出を行っている。

(写真)社会実験の状況

道路空間については、幅員約8メートルのうち車両通行幅員(3メートル)及び路肩(南北それぞれ0.5メートル)を確保し、残りの空間となる車道北側(約4メートル)を全面占用し、通行帯、マルシェ、フードコート(パラソル、テーブル、チェア)、彫刻等のアート、ストリートピアノの配置を行っている。占用する車道北側と車両通行空間となる境界部分については、おそらく日本の都心部では初めての取組みとなる軽微な歩車分離施設(プランター)を設ける方法で、管理者との合意形成を図っている。

(写真)社会実験の状況(道路空間)

民地(公開空地)については、道路空間との一体的な空間利用を図るものとして、主にはキッチンカーの設置、ワークショップの開催、音楽・パフォーマンスによる賑わいの創出を行っている。

3.社会実験の結果概要

事前告知をあまり行っていなかったが3日間実施した社会実験には、ワーカーや住民など、多くの来訪を確認した。歩行者通行量調査では、平日の「12時」が突出して通行量が多く見られたが、その時間帯のキッチンカー、フードコートは地区内ワーカーで賑わい、そのニーズの高さが確認された。

(写真)平日「12時」の様子

来訪者や通行者を対象としたアンケート調査においても、「船場地区にあれば良い・すれば良いと思うもの」として、「オープンカフェ等による賑わい」が最も多くなっている。また、アンケート項目である「車道や公開空地を活用した取組み」については9割以上の人が良いと評価している。

また、車両速度調査では、車両速度を概ね20キロ以内に抑えられることを確認している。一方で把握された課題として、歩行者の通行領域があげられる。時間帯によっては、歩車分離施設があることで歩行空間が制限され、安全性と快適性を阻害していることを確認した。つまり、歩車分離をせず歩行者が自由に歩ける空間とする方が安全かつ快適であるのではないかと考えている。

4.次年度以降のテーマ

現状、船場地区内には歩道がなく、道路形態が既にシェアドスペースとなっている。歩車分離を行わず、利活用施設を道路上に併設しても安全性、快適性に支障がないことを確認することを次年度以降のテーマとして考えている。

以上

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