大阪の歴史を振り返る

2020年3月号

大阪府・近藤智拓

私が、建築の分野を志すことになったのは、中学時代(当時、兵庫県伊丹市に在住)に経験した阪神淡路大震災の影響がかなり大きい。自宅や家族に大きな被災はなかったものの、地面からの突き上げる衝撃で早朝に飛び起きたことや、変わり果てた都市の被災状況をTVニュースで見た時の恐怖感は、今もなお鮮明に覚えている。それと同時に、安心して暮らせる都市、特に建築の領域に興味を持ち、それに携わる仕事に就きたいと思ったことがきっかけで、これまでに大阪府職員として公営住宅や建築指導、都市計画等の業務に関わってきた。

さて、今年が都市計画法制定100年の節目の年であることから、都市計画協会より“大阪府の都市計画史” について機関誌「新都市」へ寄稿するよう依頼があり、その執筆作業を行うなかで私が感じたことを少し述べたいと思う。余談だが、私は小説を読むことが好きで、特に松本清張などの社会派推理小説と呼ばれるジャンルのものをよく読む。その理由は色々あるが、おそらく戦後日本の混乱期(高度経済成長期も含め)において、その時代に生きた人々の物語を通して、日本が如何にして今の社会を作り上げていったのか、その時代を知ることが面白いからだと思う。そういった意味で、今回の執筆作業も小説を読むことに似た感覚で取組めた。先輩方の話を伺うことや事業誌を読むことを通して、全国に先駆けて様々な課題に取組んできた大阪の歴史を知り、現在の都市基盤を作り上げたプロセスを学ぶことは面白く、大変貴重な機会になったと感じている。

例えば、高度経済成長に伴って、自動車交通の急増や人口集中に伴う住宅不足、大阪湾の水質汚染等の様々な都市の課題を解決するため、大阪中央環状線等の幹線道路や大規模ニュータウン、流域下水道等の整備を図り、安心して暮らせる都市づくりの取組みがなされてきた。そのなかで、都市計画を活用した解決に真摯に取組む姿勢も学ぶことが出来た。

今後、日本は人口減少や高齢化、情報化が急速に進み、都市を取り巻く社会状況も大きく変化していく。また、それに起因する新たな都市課題が提起されるだろう。その際は、自身のスキルやネットワークだけでなく、大阪の歴史を振り返ることで学んだことも活かして、安心して暮らせる都市づくりに取組んでいきたいと考えている。

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