神戸芸術工科大学・小浦久子
阪神淡路大震災から25年が経った。大けがをした神戸のまちもようやく身体が動くようになりリハビリが進んだ。元気になってくると、つい無理をしてしまう。同時多発的に始まった都心の開発は、気がつくと体力を消耗し疾病リスクを高めることのないよう、長い目で診るまちの健康管理の視点が必要であろう。今、都市の健康において内在するリスクとなっている人口減少や高齢化などに対しては、ゆっくりと持続可能なまちへ体質改善をしていく必要がある。
専門分化された高度医療だけでなく、広く診ることができる地域医療の必要が指摘されるように、都市も地域にあった体質改善や健康管理の方法を手探りしている。空家や空き地を地域で使っていくこと、地産地消、高齢者が住み続けられるよう暮らしを支える包括的な地域支援システムなどは、いずれも所有や管理区分、所管などを越えた地域のルールが動き始めている。そして、それを支える地域の人々がいることが、まちの健康のバロメーターであろう。
まちが健康であることが人の健康につながる。本来、近代都市計画は公衆衛生から始まっている。日本の都市計画はその課題をとばして近代化のための開発事業計画となってしまった。ようやく人と都市の関係が問われるようになり、地域における人のつながり等のソーシャルキャピタル、一定の居住密度があって職住共存や用途混在によるウォーカビリティ、地域の歴史や生活にねざしたランドスケープなどが、安心で安全な地域環境に必要なものと認識されてきた。
関西には固有の自然条件のなかで多様な歴史と文化を育んできた生活圏や集住のまとまりがあり、地域らしい取り組みがみられる。利便性と効率性、経済合理性を追求する開発が必ずしも未来の健康なまちを実現するとは限らない。多様な人が住み続けられる健康なまちに向けて、関西での試みを発信しながら、計画のあり方を模索していく。