地に足の着いた地域包括ケアの展開

2020年3月号

生駒市 田中明美

■はじめに

 本市は、団塊の世代が後期高齢者となる2025年に向け、「地域包括ケアシステム」の構築を目指し、規範的統合を進めている。特に令和3年度に、前期高齢者と後期高齢者の割合が逆転することや、2025年までの後期高齢者の伸び率が全国上位5%に位置することなどもあり、超高齢社会の到来への対応が急がれている。そのような背景もあり、多くの高齢者が地域において活動的に暮らせる取組や、支援が必要な高齢者に対する支え合いの仕組みづくりをまちづくりの中に融合させ、地に足の着いた地域包括ケアの展開を進めることがとても重要である。

 その実現に向け本市では、平成26年度より、庁内に横串をさし、連携強化を図るため、副市長をトップとした【地域包括ケア推進会議】を設置し、具体的に何をすべきかについて庁内連携図を示したロードマップを描いている。

 その中で特に、健康寿命の延伸を図るために必要な【介護予防事業】や【自立支援を促す地域ケア会議】に焦点を絞り、「健康なまち」づくりを進めている点を紹介する。

■介護予防事業

 最初に「介護予防」とは、高齢者等が要介護状態等となることの予防又は要介護状態等の軽減若しくは悪化の防止を目的とする取組である。本市では、その取組を独自に図1のようにデザイン化し、効果的・効率的な介護予防事業を推進している。特に虚弱な高齢者の生活機能の低下を助長することを防止するために、日常生活圏域・徒歩圏域に、週に1回・確実に体操等が実践できる通いの場となる拠点を増やし、活動性の維持や地域の支え合いの仕組みづくりの構築を進めている。月1回の開催等を含めると、平成27年度末83ヵ所だった住民主体の活動の場が、平成30年度末には167ヵ所となり、歩いて行ける距離のところに通いの場があることが高齢者の活動を向上させ、要支援・要介護認定率の低下や介護給付費抑制にもつながる成果の1つではないかと考える。

 同時に高齢者が地域で活動する場が多くあることは、おのずと地域の見守りもできるため、子供や障害のある人にとっても安心・安全なまちにつながる。

 こうした通いの場を見える化し、高齢化率や地域の課題に応じ、意図的に増やしていく働きかけが重要である。

■自立支援を促す地域ケア会議

図−1 生駒市の介護予防事業の取組について

 図1の右上に本市の介護予防事業をデザイン化したうえで、特に要介護に近い状態の高齢者に対し、多職種の専門職が参加して、個々の高齢者の自立を阻害する因子を分析し、解決方法を検討する「自立支援型地域ケア会議」を開催している。例えば、下肢筋力低下が見られる高齢者では、家族を突然亡くした喪失感により、うつ症状が出現し、食欲・意欲の低下を招き、活動性が極端に減少する。それにより、体力・筋力の低下が起き、悪循環の渦に入ったとすると、その状況を改善する術については、多職種で丁寧に事例検討し、低下した心身の機能を回復させることを考える。その取組を重ねることで、個別課題から地域課題へと発展させ、必要に応じて図2に示す地域包括ケア推進会議を活用し、庁内連携により効率的・効果的に事業を推進できるよう工夫している。

図−2 地域包括ケア推進に関する庁内連携体制

■終わりに

 介護予防事業の推進で大切な通いの場の拠点づくりでは、地道な活動の継続のほか、多部局との連携により空き家活用の模索や担い手養成など、庁内に横串をさすことで事業に広がりを持たせて、地に足の着いた地域包括ケアの展開をさらに充実させていきたいと考えている。

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