都市公園における官・民・市民協働の進展

2019年3月号

兵庫県立大学 赤澤宏樹

共同・協同から協働の時代への転換

 昭和時代の都市公園は、大〜中規模のものは府県や市町村の行政職員が外郭団体に出向しつつ、そこが管理業務を受注する直営方式をとっていた。中〜小規模のものは、公園ごとに地区の自治会や公園愛護会に日常の簡単な維持管理を依頼しつつ、施設管理は行政が直営で行ってきた。前者の仕組みは平成の30年間で制度改正や計画・管理技術の進歩によって大きく変化し、後者の仕組みも平成が終わりつつある中で新たな展開が起こりつつある。概観すると、公の目的、立場、活動を民も業務委託や依頼、狭義のボランティア(労働提供)によって担う「共同」、公の目的と活動を企業のCSR活動やNPOによる社会活動など民が異なる立場で行う「協同」から、公的な目的は同じくしながら、それぞれの立場や能力を活かして社会課題の解決や都市サービスの提供を民や市民が進める「協働」に移行してきた。この「協働」の時代への転換が、都市公園の管理運営を効率的にするに留まらず、市民・NPO・民間企業のノウハウや活力を社会に還元し、新たな都市サービス基盤として都市公園が機能する状況を生み出した。

阪神・淡路大震災からの復興と都市公園

 平成の時代の都市公園における協働は、平成7年に発生した阪神・淡路大震災からの復興に端を発するところが大きい。一時避難から数年にわたる生活の場として都市公園を使う経験を通じて、社会全体が都市公園を「コミュニティを含めた社会基盤」と再認識した。従来から都市公園を小学校、公民館などの公共施設と隣接させ、一体的に活用する必要性が論じられてきたが、六甲道北地区(神戸市)の震災復興土地区画整理事業において、まちづくり協議会からの提案を受けて六甲道北公園(六甲風の郷公園)が整備された。この約0.8haの近隣公園内の敷地には、六甲道北地区集会所「風の家」も整備され、それぞれ六甲道駅北地区公園管理会と「風の家くらぶ」がまちづくり連合協議会内に組織され、公園の維持管理とまちづくり活動を一体的に行っている。このように、地域の祭りや防災活動など広くコミュニティ活動の場として都市公園を活用することを目的とし、公共施設と都市公園を一体的に整備・管理運営するプロジェクトが実現できたことは、昭和の時代に量的拡大を中心に進めてきた都市公園にとって大きな変化であった。地域づくりに資する都市公園を、地域住民が管理運営するモデルは、その後の「地域に資する公園」の基盤となったと言えよう。

都市公園の管理運営計画

 昭和期に計画された大規模公園においても、協働の重要性から新たな管理運営計画が策定された。平成13年に開園した兵庫県立有馬富士公園は、開園面積178.2ha(計画面積416.3ha)の広域公園でありながら、利用者がホストとして活躍するといった協働の仕組みを取り入れた管理運営計画を平成11年度に策定し、それに基づいて「しくみづくり部会」「きっかけ・人づくり部会」「場所づくり部会」「ネットワークづくり部会」を置いて管理運営を始めた。従来の自然の枠にとらわれず、文化活動も含めた市民団体によって「夢プログラム」を実施してきた。中小規模の住区基幹公園では理解されやすい協働も、近隣住民ではない多様な団体が参画すると発現する課題も多く、ソフトとハード、団体の個性と協調といった部分をリサーチしつつ1)、管理運営協議会での議論を通じたパーク・マネジメントを行うモデルが構築された。その後、兵庫県では全県立公園で管理運営協議会を設置することとなり、全国的にも協議会方式が広く浸透した。 

図−1 多様な市民が公園のホストになる「夢プログラム」

指定管理者制度の導入

 平成15年の地方自治法の一部改正に伴う指定管理者制度の導入、および平成16年の都市公園法の一部改正による公園管理者以外の公園施設設置および管理の許可によって、それまで公が担ってきた都市公園の管理を多様な主体が行う制度が整備された。それまでもPPP/PFI手法として、都市公園法第5条による設置管理許可や、民間資金などの活用による公共施設などの整備などの促進に関する法律によるPFI事業があったが、全国で10万箇所以上ある既存の都市公園において平成28年度時点の大規模公園における指定管理者制度の導入状況が、都道府県で87.7%、政令指定都市で50.4%、市区町村で38.9%と高い水準で推移しており2)、特に大規模公園での制度の導入が大きく進んだ。住区基幹公園のような中小規模の都市公園では、管理規模による事業性の低さや、地域コミュニティへの影響の大きさから導入が進んでいないが、西東京市では平成28年度から西東京いこいの森公園を中心とした小規模公園を含む50公園緑地(公募時。現在は53公園)を、八王子市では平成29年度から東由木地域81公園緑地を一括で指定管理者制度によって管理運営を行うなど、関東では多数の小規模公園を一括して指定管理者制度によって管理する取り組みが始まっている3)。関西でも、神戸市のパークコミュニティ・タウンとして、藤原台連合自治会を母体として15街区公園を地域全体で使い分けしながら利活用する取り組みが進むなど、地域単位での公園群の管理運営の萌芽がみられる。 平成5年に児童公園が「街区公園」として広い年齢層と多様な利用に供されるべく都市公園法施行令が改正されたが、街区公園単体の議論では児童の利用を優先せざるを得ず、多様な街区公園への移行が進みにくい状況にあった。中小規模の公園群の一括管理運営や、そこへの適切な指定管理者制度の導入によって、地域ニーズに則したパークマネジメントが期待できる。

図−2 西東京いこいの森公園及び周辺の市立公園の指定管理範囲3)

都市公園法の一部改正による民間参入

 指定管理者制度の導入後も、様々な手法で都市公園への民間参入が進められてきた。大阪府営泉佐野丘陵緑地では、「府民と育てる緑地づくり」の趣旨に賛同する企業グループ・大輪会の構成企業から、平成20年度より10年間にわたり総額2億円相当の機材などの支援を受けながら公園の管理運営を行っている4)。尼崎21世紀の森構想では、「地域が育てる森、地域を育てる森」を基本理念とする尼崎の森中央緑地において、周辺工場が育苗、植樹、管理活動への参画や寄附など、様々な関わり方で生物多様性の森づくりに参画している。加えて、「尼崎21世紀の森型工場緑化」を行う工場に対して、「尼崎市工場立地法の特例及び景観と環境に配慮した工場緑化の推進に関する条例(工場立地法準則条例)」(平成22年度施行)によって緑地の確保義務を緩和し、構想エリアの緑の質を高めることも進めている5)。

 大阪城公園では、平成26年度のパークマネジメント事業者(PMO:Park Management Organization)募集において、便益施設整備の提案を求めた結果、全22テナントが入る施設“JO-TERRACE”が事業者によって整備された。事業者は基本納付金と収益の7%にあたる変動納付金を設置者に納め、観光拠点の経営に管理運営面および収益面に貢献する仕組みとなっている。平成29度年の都市公園法の一部改正においては、収益を公園整備に還元することを条件に、このような利便施設を設置管理許可期間や建蔽率、占用物件の特例などを受けながら民間企業が整備できる公募設置管理制度(Park-PFI)が創設され、公園も経営の時代へ大きく舵を切った。また、保育所その他の社会福祉施設が都市公園内の占用物件へ追加され、多様な社会課題に対応できる制度も整ってきた。

平成時代の公園の管理運営とこれから

 平成時代の30年間で、様々な規制緩和と経営手法の導入によって、規模や立地など一定の条件を満たす(主に大規模な)公園では、官・民・市民協働が大きく進展した。一方で、公園での収益が公園の機能向上に還元されないことや、公園サービスを向上させること無く占有する施設が整備されることも懸念され、公共性と市場性が好循環を生み出す公園経営が、次の時代の公園の管理運営に強く求められる。

 住区基幹公園を含む中小規模の公園では、公園群の一括指定管理が進む可能性がある。地域住民の日常生活に大きく影響するため、地域の目標像の検討とその公園管理運営への適用、指定管理者の選考への市民参画など、更なる官・民・市民協働が生まれる工夫が求められる。また、広場や歩行空間などの活用とあわせて、地域らしさを発現するパブリックスペースとして更に機能することが期待される。

参考文献

  • 1)  藤本真里・中瀬勲(2006)兵庫県立有馬富士公園における住民参画型公園運営の課題と展望,ランドスケープ研究,69(5), 757-762.
  • 2)総務省(2017)地方行政サービス改革の取組状況等に関する調査等(http://www.soumu.go.jp/iken/112810.html)を参照。
  • 3)西東京いこいの森公園及び周辺の市立公園の指定管理者
  • http://www.city.nishitokyo.lg.jp/kurasi/koen/koenryokuchi_oshiras/siteikanrisha.html 参照
  • 八王子市東由木地域都市公園指定管理者 https://www.h-yugi.org/ 参照
  • 4)泉佐野丘陵緑地(これまでの経緯)
  • 5)赤澤宏樹・藤本真里・上田萌子・澤木昌典(2014)尼崎21世紀の森構想における官民協働による緑の創出、ランドスケープ研究、77(5)、707-712.

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