平成時代の自転車交通と都市計画・まちづくり分野との連携の可能性

2019年3月号

大阪市立大学 吉田長裕

自転車交通が注目されるようになった背景

 平成という時代は、交通分野において自転車交通が大きく見直された時代といってもいいのではないだろうか。環境や健康といった社会問題に対応するために、従来の自転車交通の位置づけを見直す動きは、国内外に広まっている。

 遡れば、交通事故が多発した1970年代に、自転車の通行場所として歩道が認められて以降、高速道路をはじめとする幹線道路の整備が進められてきた。道路整備の統計によれば、約120万kmの全道路のうち歩道のある道路は15%程度、自転車専用道路に至っては1%未満にとどまっている。一方、国勢調査の結果によると、昭和45年以降自動車利用が一貫して増加している反面、公共交通(特にバス)や徒歩、自転車は年々減少傾向にあるものの、平成22年の自転車分担率は12%程度を占めている。自転車は、都市部で増加し、交通不便と言われる地方部で減少している。それでも欧州には、自転車分担率が2桁以上ある都市はほとんどなく、日本の大都市の多くで自転車が使われていることを知って、海外の専門家も驚くことが多い。

 国内では、平成に入ってからも国の審議会等で自転車交通が何度も取り上げられてきており、近年では、様々な法・計画制度、技術基準の見直しや地方分権化が進められ(表-1)、各地方自治体が自転車交通計画を策定してきた。

表−1 近年の自転車関連制度や技術基準に関わる変更内容

自転車活用推進法・活用推進計画の意義

 これらの様々な制度が見直される中、最も注目すべきは平成29年に施行された「自転車活用推進法」である。この法は、平成25年に成立した「交通政策基本法」とも関わるもので、この法に基づいた「自転車活用推進計画」が平成30年6月に閣議決定された。この中でとくに重要なのは、自転車が他の交通手段に比べて環境性能に優れかつ機動的であり、自動車への依存の程度を低減する代替手段として、公共の利益の増進に資すると理念に示されたことである。加えて、この理念を具体化するために、4つの目標と18の施策、83の措置が計画に示された(図-1)。この中にあるキーワードをみると、今日的課題と自転車の効用が様々な分野と関わっていることがわかる。これまでは、一部の市町村が計画を策定してきたが、この法律及び計画によって、より多くの都道府県・市町村でも計画が策定される予定である。

図−1 自転車活用推進計画の概要(出典:国土交通省)

都市計画・まちづくりへの自転車活用の期待

 これまで自転車と言えば、違法駐輪問題や交通安全上の課題からきつい、汚い、危険の3Kと揶揄されることもあった。しかしながら、それらの対策も一定程度進んできており、小規模分散型の駐輪場の拡大、公共交通を補完するシェアサイクルの展開など、新たな動きも広まりつつある。従来の課題対応型から環境、健康、観光の新3Kの自転車政策への転換が求められている。また、この先に直面するであろう、人口減少、労働者不足、災害、気候変動といった課題に自転車交通が果たせる役割も再考する必要がある。

 とくに、都市計画やまちづくりの領域では、自転車を使ったアクティビティやその通行空間・駐輪場、そのネットワーク化、さらにはその将来的利活用価値を地域・地区の課題にどうフィットさせていくのか、例えばシェアリングといったキーワードを深掘りすることが考えられる。都市のスポンジ化ならぬ交通空間のスポンジ化はすでに進行しており、道路空間の再配分とともに新たな空間マネジメントのあり方も模索されはじめている。今後は、自転車に関連する環境、健康、観光の新3Kに関わる様々な分野と連携し、交通空間と都市空間とに関わる横断的活動を期待したい。

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