生野区桃谷に流れついて...

2019年3月号

建築家・桃谷のコミュニティ再生・住み開き 伊藤千春

 桃谷に住みはじめて6年。桃谷がどこにあるのかも、生野区だということも分からなかった。

 そんな中始めたのが「momodani-project」。10年以上空き家だった1軒家を借りて、セルフリノベーションを始めたのだ。当時、5年勤めた西宮の設計事務所を退社し、大阪南部にある工務店に勤め始めたところだった。“自分で工事したい熱”がムクムクと湧いていて、大阪・堺周辺の改修可能物件を探しまくっていた。「DIY」や「リノベーション」がまだまだ一般的ではなかった当時、改修可能だとしても原状回復義務があるという意味不明(笑)な条件のついた物件が多く、探すのに4カ月ほど要した。通っていた建築の専門学校の後輩の「桃谷辺りなら古い建物多いですよ」という一言が、私を桃谷へ導いたのだ。

 平成24年9月にスタートしたプロジェクトは、9カ月かかって翌年7月にオープニングイベントを開催することとなる。そこで、「住み開き」をすることと、場所の名前「イベントと、ギャラリー itochiha」が決まった。

 後になったが、私の自己紹介を簡単にすると、出身は山形県。姫路にある大学に通い、専攻は「分子生物学」...建築ではない。白衣を着て試験管を振る日々。なぜ今建築!?というお話は少し長くなるので割愛するが、「建築って面白いかも!」と思ってしまったのだ。日中研究の仕事をしながら、夜専門学校で建築を学んだのが20代半ば。卒業と共に完全に建築に移行することとなる。

 それが良かったのかどうかは分からないが、様々な繋がりから「momodani-project」→「itochiha」の活動へと変遷していく。当初は工事したいだけだったが、住み開きをすることになったのも大家さんの言葉がきっかけではある。itochihaオープンから1年ほど経った頃から、地域・役所の方々との交流が始まり、一緒に山形の芋煮会を開催したり、「生野区空き家活用プロジェクト」などの活動をしたりと、地域活動や区政会議にも参加させて頂いている。

 一昨年から「桃谷ロイター」という活動も開始し、地域の歴史の掘起しや多種多様な新旧住民の紹介、ものづくりや空き家などの情報発信も行っている。新しく桃谷にやってきた人たちや空き家の活用事例も出てきており、点が線となり、面になりつつあると感じる平成最後の年。

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